私のソーラン祭り ② 長谷川岳氏の登場

②長谷川岳氏 の登場

大きく物事が動く時、天に選ばれたキャスティングを感じる時がある。
長谷川岳氏は、私の中でそんな存在の一人だ。

91年の夏、長谷川氏のお母様が高知医大に入院されていてそのお見舞いに高知に来ていて
たまたまよさこい祭りを見て、セントラル91の踊りに出会ったという。

感動の稲妻が彼の全身を貫いた事は、用意に想像できる。

こんなにもエネルギッシュに若い人達が踊ってるなんて、凄い‼️

これを北海道でもやりたい。

北海道には雪まつりがあるが、春から夏にかけては、とくに大きいイベントがない。

夏を迎える前にこの祭りを北海道でできたら!!

長谷川氏は、北海道に帰ってすぐ友達に声をかけて約100名ほどの実行委員会を結成する。

長谷川氏の行動力は、すごかった。

午前中、北海道にいる長谷川氏と電話で話したのに、15時には高知で会ったり。
どこでもドアの持ち主ではないかと思うほどフットワークが軽かった。

当時、高知県庁で高知県知事橋本大二郎氏の出待ちをして、知事がおでかけになる時に、企画書をもって知事に直接直談判したエピソードもある。

それから、よさこい祭りを実現するために、よさこいの紹介を録画したV H Sのビデオを100本以上作り、
自転車の荷台にのせて企業をめぐり始めた。

よさこいのよの字も知らない北海道の人によさこいを紹介するところからやるわけだから、想像しても気が遠くなる。

しかし、長谷川氏の想いは、それ以上に熱かった。
そして、その実現力は神がかりだった。

協賛金を集め、道路を使用するために行政や警察、いろんな所をまわった。

8月に感動して次の6月に開催するのだから、正味10ヶ月あまりしかないのに、物事はあれよあれよと動いていった。

当時の高知県知事、北海道知事、議員のみなさん、マスコミの方々、企業の方々、たくさんの人が長谷川氏の熱意に心を動かされて行った。

「よさこいソーラン祭り」
1992年6月13.14日開催
それは、たくさんの人々の手でどんどん形になっていった。

そして、本番を目前にした数ヶ月前、あほんだら会(セントラルよさこいのプロデュースチーム)に招集がかかった。

須賀先生が留守の為、先生の代わりに私がその会に参加した。

あほんだら会は、まだ20代の私にとっては、最高に緊張する場所だった。
みなさん、起業家としてセントラルに関わる社長の集まりで、皆さん優しくていい方達ばかりだとわかってはいるが、愛想笑いなどしない本物の横顔は、若い私には尊敬してやまないが、全てを見透かされている様な緊張感が漂い、
かなりと怖い空間だった。

ドキドキして座っていると、長谷川氏の顔が見えた。

なにがあるのかと思っていたら、彼がいきなり土下座をした。

「一生懸命、お金を集めたのですが…。運営費まではなんとかなったのですが、
セントラルチームの皆さんを招待するまでには、足りませんでした。
 でも、セントラルなしでは、よさこいソーランができません。
セントラルさんあっての祭りなんです。
なしでは、やる意味がありません。
費用はありませんが、どうか北海道へ来ていただきませんでしょうか。
お願いします。」

深く長い沈黙がながれた。
山本文吉社長は、腕を組んだまま黙った。
あほんだら会はじっと山本社長の言葉を待った。

山本社長
「全部でどのくらい費用がかかる?」

あほんだら会
「交通費、宿泊費、地方車の運搬、もろもろざっくりですが、1500万〜2000万くらいでしょうか」
(実際は、3000万近くにも膨れ上がったという)

山本社長
「踊り子さんに、少し負担してもらうのは、どうやろう。須賀先生は、どうやろうかね。」

当時、須賀先生は、「県外遠征に踊り子がお金をだしていくのは、筋が違う。」
とおっしゃっていたので、「そう言うと思います」
と答えた。

山本社長「そりゃそうじゃ。踊り子さんに頼むことではないね」

今は、踊り子さんが交通費を負担していくのが普通になっていますが、当時はそんな時代ではなかったし、
遠征自体も今ほど多くもなかった。

また、長い時間が流れた。
「どうなるろう。」山本社長の一言に全員が集中した。

そして

社長は、静かに
「わかった。行こう」

と言った。

この瞬間がよさこいソーラン祭りが実現した瞬間だったかもしれない。

若い私は、歴史が動く瞬間?
何かが大きく動き出した事を肌で感じていた。

心底「すごい」と思った。

人の思いが事を動かす瞬間に立ち会えた感動で体か震えた。

でもこの「すごい」は、それからの時の流れの中で、ほんの始まりでしかなかった。





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